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Media Spice!
松木直也のマイイートロード
 *** No.28


料理をおいしくする秘訣は、何よりも愛情……
そう思わせてくれる料理屋さんが横浜元町にあります。
オープンは1972年。以来地元横浜ではもちろん、多くの著名人から
第二の“お母さん”的存在として愛され続ける
「元町 梅林」の女将、平尾禮子さんに、
おいしいおにぎりの極意を教えていただきました。


店を手伝う大学4年生のお孫さんと一緒に。
  平尾禮子さんは、静岡県生まれ。7歳のときに横浜に移られ、横浜共立学園を卒業後、実家である横浜吉田町の老舗料亭「梅林」を手伝いながら、料理研究家の田村魚菜氏に師事して料理の腕を磨かれた。そして72年、お母様のすすめで「元町 梅林」をオープン。以来、映画監督の故・黒沢明氏や俳優の仲代達矢氏をはじめ、各界の著名人たちからも愛される料理屋の女将として、75歳の現在も現役で毎日厨房に立っている。

(右上のふたつ)梅おにぎり/「元町 梅林」定番の梅おにぎりは、俵形。お茶漬けにして食べても美味。
(中央と左上)おかかおにぎり/手水と塩の代わりにおしょう油を使ったしょう油にぎり。チーズも合います。
(下のふたつ)キンピラおにぎり/出汁で油を洗ってさっぱり仕上げたキンピラごぼうで握ったおにぎり。ほっとする味です。
  この店いちばんの特徴は、なんといっても料理の品数の多さだ。三浦半島佐島港の漁師さんから毎朝仕入れる魚貝をはじめ、女将さんが全国を旅して目利きした食材を使った料理が一コースで約30品も登場する。しかもそれらは、素材を生かすためにひとつひとつ丁寧に下ごしらえをし、じっくりと手間ひまをかけた料理ばかり。ボリュームもたっぷりである。ちなみに取材の日にごちそうしていただいた昼のメニューは、女将さん手作りの佃煮をはじめとした前菜盛り合わせ11種、枝豆の煮物、なすの煮浸し、大きなオケに盛られたお造り(この日は活きのいい鮪が一尾手に入ったということで、板長が店で捌いた大トロに牛刺し、貝類などの5点盛り)に北海道の毛ガニ、朝つきたてのお餅の揚げ出し、特製鰹出汁のそうめん、和牛ステーキ、フォンドボーを使った、野菜と果物のソースを添えた海老フライ、ごぼうのヴィシソワーズ、桃の天ぷら、山芋のサンドイッチ、サワラのマリネ、3種の握り寿司、新潟栃尾の豆腐、ウナギの笹巻き、ジュンサイの茶碗蒸し、エリンギと帆立のグラタン、バナナのムース等々……そして締めは女将お手製のおにぎり。初めて訪れた人は、和・洋盛り込まれたバラエティに富んだ料理と、次から次へと運ばれてくるその品数の多さに、ただひたすら圧倒されることになる。

 「うちは、私をはじめ家族もスタッフもみんなが食いしん坊なんです。だからテーブルいっぱいに料理を並べて、おもてなししないと気が済まないの」
 女将さんのそんな言葉に一度は納得したものの、店を手伝うお孫さんの「完食されるお客様は、半年にお一人いるかいないかなんですよ」という一言には、思わず苦笑してしまった。聞けば、常連さんは最初から持ち帰る事を想定して、店で食べるものとお土産用を配分しながらコースを楽しむのだという。そのため、この店のお客は皆、紙袋いっぱいに料理を詰め、家で待つ家族の顔を浮かべながら帰路につく。そして、そんなコースの中でもとりわけ楽しみにされているのが、締めに出される女将さん手作りのおにぎりなのである。
「当初は、コースの最後にそうめんやおそばなどをお出ししてたんですが、皆さん食べきれず残されてしまうのです。そこでおにぎりならお持ち帰りいただけると思って」
 各界の著名人をはじめとしたこの店の常連たちが皆、口を揃えて「料理屋というより、実家に帰ったような気分になれる場所」と愛着をもつ理由が、女将さんのこんな母心にあるのだと納得した。
「孫が運動会で一等賞になりますように、そう願いながら握っていたおにぎり、子供や店のスタッフが今日も元気に働けるようにと思いながら握っていたおにぎり、それがいつの間にかお客様にも喜んでいただける名物になってしまいました」  女将さんは、今日も朝から炊き立てのご飯と手作りのおしんこを前に、愛情込めておにぎりを握っている。

平尾禮子(ひらおひろこ)さんプロフィール

静岡県藤枝市生まれ。7歳から横浜に移り住む。横浜共立学園卒業。
実家の「吉田町梅林」を手伝う傍ら、料理研究家の田村魚菜氏に師事。
1972年、母のすすめにより「元町 梅林」をオープンする。現在、娘夫婦と孫達とともに女将として店を切り盛りしている。
著書に「女将の評判おにぎり」創森社がある。

 

はじめに…
★ ごく少量の手水をつけ適量の塩を指先に取る。
★ 手のひら全体に均一に塩をのばし、
  手になじませる。


慣れないと手にごはん粒がつくのが嫌で、ついたっぷり手水をつけてしまいがちですが、つけすぎると水っぽくなっておいしくありません。手水はごく少量、手が軽く湿る程度に。そして具の味付けによって、手塩の量を加減します。

定番は、自家製の梅干し。ほかには、大根の味噌漬けやキンピラなど野菜もの、カマス、アジ、シラス、ハムなど魚や肉類は、ショウガや山椒などと混ぜて佃煮風にするなど、その日余った食材を工夫して具にすると際限なく楽しめます。



人さし指、中指、薬指の3本をまっすぐ倒して山をつくり、角をつける。

角度を変え、3本の指と親指で包むようなつもりで角と面を整える。

強く握らず、やわらかめを心がけて形を整えて完成。


1. 手のひらを軽く丸め、細長い形にご飯を盛る。

2. 親指を除いた4本の指を丸めたカーブを利用して細長く握る。

3. 均一な円柱形を作り、側面を整えて完成。

1. 手のひらを軽く丸め、適量のご飯を盛る。

2. 手指を丸め、第1関節から指のつけ根にかけてのカーブを利用して丸みをつける。

3. 手の中でおにぎりを回しながら、軽く握って仕上げる。

●平尾さんからひとこと●
 形はしっかりしているけれど、中はふんわり。
  口に入れるとほろりとほぐれるやわらかさが理想です。
 手早く、軽く、手首のスナップを利用してテンポよく!
  それには”慣れ“しかありません。

   


元町 梅林

元町の喧噪から少しだけ離れた、静かな裏露地に佇む一軒家。
メニューは、8,000円から15,000円までの日替わりコースのみ。8月下旬からは「松茸コース」、春先には「筍コース」など季節限定のコースも登場する。また、お昼はコース以外に、女将さんおすすめのボリュームたっぷり「天丼」(2,200円)や「和牛ステーキ丼」(3,500円)もぜひお試しを。
店には、故・黒沢明監督直筆の看板が。この店がことのほか気に入っていたという黒沢氏は、忘年会や新年会をよく行っていたそうだ。

横浜市中区元町1-55
TEL.045-662-2215

<定休日>毎月曜日 
<営業時間>13:00〜15:00、17:00〜19:00、19:30〜21:30
※2時間制のコース料理が基本。要予約

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