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生活を楽しむ家
 
 
 
生活を楽しむ家

 9月のある日曜日、正午ぴったりの約束だった。パリ9区のモンマルトルの丘のふもとにあたる地区。秋の始まりを感じさせるひやりとした空気を感じながら、住所にあった建物を見つけた。重い扉を開け、暗い廊下のその奥にある中庭の向こうに、ローラン・クラベットさんの住むアパルトマンがあった。ベルを鳴らすと中庭まで飛び出てきて、ソフトな口調であいさつをしてくれるローランさん。さっそくダイニング・ルームへと案内してくれた。

 古さが漂う部屋の向こうに明るいテラスがある。午前のまだ弱い光に壁のグリーンと存在感のあるがっちりとした家具が目に入る。テーブルには彼自身が用意してくれていたセッティング。「フランスの南西部に住んでいた頃、母がよく日曜日に用意してくれていたブランチです」。南西部名産のフォアグラは、ローランさんの母親が作った自家製。それに秋の果物をたくさん使ってデコレートしてみたという。「うちでは、フォアグラにオレンジの香りのパン・ド・エピスを添えます。それに甘みの強い遅摘みワインを合わせるんです」。

 ローランがこのアパルトマンを見つけたのは昨年の5月のこと。物件探しを始めて3度めにたずねたこの物件の中庭を見て心はすぐに決まった。しかし建物は1860年築のナポレオン3世時代のもので、前に住んでいた老女はほとんど手入れもしていなかったらしい。電気は最初にスイッチを入れるとショートしてしまったほど古びた物件だった。しかしそこはスタイリスト兼デザイナーという職をもつローラン。壁に何十にも重ねられていた壁紙をはぎ、19世紀のパリの建築の原型を探し求めながら、彼は自分のインテリアを作っていった。物心ついた頃から惹かれるブリティッシュのテイスト、ネオ・クラシックの世界を、少しずつ集めた家具や小物で作り上げた。好きなものーそれはフランス風ちょいワルなダンディズム。ようはミスマッチな美と言おうか。昔のブルジョワが持っていたような“古くさい”焦げ茶の重々しい家具も置く。テラスのテーブルのアクセントにと、撮影のために彼がそっと添えたレースのハンカチもそう。「決して流行でないことはわかっている。だから少しだけ入れてみる。好きなものは好き。僕はそれでいいと思う」。

 撮影の時間が進むうちにテラスから差す光が増し部屋全体がふんわりとした光に包まれてきた。1日、ここにいると差し込む光の量が変わるのがよくわかるという。実はローランがこの壁の色を決めたのはごく最近のこと。自分自身でペイントをした。「グリーンはインテリアに使うのに決して簡単な色じゃない。でも、光の変化で色の変化を感じられる色は何かと考え抜いてやっと選んだんだ」。フレンチ・ヌーベル・ダンディズムに感服、である。


生活を楽しむ家

生活を楽しむ家 ローラン・クラべットさん
Laurent Crabette
上、右から ●ダイニング・ルーム。ブリティッシュなテイストを創るために、椅子にはこれから張ろうと思っているタータン・チェックの生地。●寝室の窓際に置いた作業テーブル。ダンディズムで遊び心のある小物をさりげなく。●テラスのテーブルに即興で作ってくれたセッティング。ローランが水彩画を書いている日記帳も。●キッチンからもテラスへ出られる。●ブランチにはきれいなお菓子も添えて。●窓から入るきれいな光で絵を描く。●コレクションの美しいグラスの奥に中世風の肖像画を飾っている。

TEXT:中平美紀 PHOTOS:Jacques Pepion
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