すぎや・まさるの湘南ブランチ

連載第81回

「これからきっと、インドが来る。」

先日、日本で技術系の外国人の派遣会社を立ち上げて成功した、あるインド人の経営者と話しをする機会があった。彫りの深い端正な顔立ちに、笑みを浮かべた話しぶりは穏やかだが、その内容はとてもシリアスで、考えさせられるものがあった。彼によると、現在、日本では慢性的にエンジニアが不足していて、特にITの分野でインド人技術者の需要が高まっているのだそうだ。

「すぎやさん、日本人はもともと器用な民族で、精密機械などは得意だったはずなのに、どうしてスマホの端末では、世界的に成功した企業がないのでしょうか?」と、質問を投げかけられた。

「言われてみれば、そうですね。お隣の韓国では成功しているのに……何か、日本人の気質と関係があるんでしょうか?」と問い返す。

「これはワタシが感じていることですけど、日本の技術者は、開発スピードが遅い。というより、世界が速くなり過ぎて、日本のスピードでは追いつかなくなってきた、というのが正しいかもしれません。

スマホの分野などは特に顕著で、どんどんバージョンが上がっていく。インドをはじめアジアの若手エンジニアたちは新しいソフトの習得にも貪欲で、しかも労働賃金が安いので、これからも需要は伸びていくと思います」。

うなずきながらも、意外そうな僕の表情を見透かしてか、「でも、日本の技術者はとても慎重でミスが少ない。だから自動車のように人の命が関わり開発や実験に時間を要する産業分野では、まだまだいけますよ」と、フォローしてくれた。

「ものづくり日本」や「技術立国」といった言葉を以前のまま受けとめていた僕としては、シビアな現実を突きつけられた気分だったが、一方で納得できる部分も多かった。いまやインドの人口は13億人に達し、国連の試算では2024年に中国を抜くという。

これから最も勢いのある、アジアの大国になりそうだ。 経済発展とともに、その人たちがみな自動車に乗ってエアコンを使い始めたら、地球はどうなってしまうのか……科学の進歩や経済の発展が、必ずしも人類の幸福を約束するとは限らないことを知ってしまったいま、世界はこの先、どこへ行こうとしているのか……そんな思いは、日本人である僕の傲慢かもしれないが、正直なところ心配になる。

古代より数学を研究し、ゼロ=0の概念を確立させた国。人のカラダや精神が、宇宙や自然と一体化するヨガを生み出した国。そうしたインドの英知や思想が、混沌とした時代にあって、永続的な未来を開くキーになってくれると信じたい。

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