*** No.24


ケーキは世界中で、お祝いごとや喜びの席に欠かせないもの。眺めて美しく、ひと口食べれば幸せな気分になれる、
そんなケーキを作る職人になりたいという、子供のころからの夢をかなえたパティシエがいます。
今回は、横浜出身のスーパー・パティシエ寺井則彦さんを訪ねました。


寺井シェフの洋菓子ワールド〜チョコレートとスペイン産アーモンドで作った、自家製プラリネを合わせた大人の一品「ノワール ラフィネ」、自家製マロンコンポートをコーヒー風味の生地と合わせた「シャタン」、シュー生地を器状に焼き上げ、カスタードクリームとキャラメル風味のバナナを合わせた「カスレット」等々……。見た目ではなくあくまでも味にこだわる、という寺井シェフの言葉通り、ひとつひとつが強烈な味わいの印象を残す。

 JR目白駅から商店街を歩いて7分、パティシェ寺井則彦さんのお店「エーグル ドゥース」がある。オープンは今年の2月。それまで寺井さんは四谷「オテル ドゥ ミクニ」でシェフ・パティシェを7年間務めていた。そこで、一体どんな仕事をしてきたのかというと、パティスリーで売られるケーキ作りはもちろんのこと、オーナーシェフである三國清三さんの作り出す料理のデザートを任されていたのである。これは、毎月内容が変わる前菜、魚料理、肉料理、チーズと流れるコース料理のフィナーレを任されるということ。(しかも「オテル ドゥ ミクニ」ではアヴァン デセールといって2皿出すことも多い)。
 では、世のパティシェ達がこういった経験をしているかとういうと、パティスリーでのお菓子作りのみを経験する方が圧倒的に多いのである。
「パティスリーのお菓子とレストランのデセールはまったく発想が違います。季節の素材を取り入れた料理に合わせ、毎月何種類もの新作を考えていきます。そのアイデアを出すのは苦労でもあり、楽しみでもあります。僕にとっては三國シェフとの経験はとても大きいし、何より創造力が鍛えられました」と語る。デセールはコース料理の印象の決め手となる存在。寺井さんは第一線の場で長年腕を磨いてきたのである。


  そんな彼がパティシェになったきっかけは何か。子供の頃、多くの人が「ケーキ屋さんっていいなぁ」と夢を見るように、寺井さんも幼少の頃から「大人になったらケーキ屋さんになりたい」と思っていたという。そして「仕事をしている今でも、子供の頃の気持ちを忘れないことが大切なんです」と語る。それは”ケーキ“という魅惑の食べ物には、誰かとの思い出や、大切な人との交友が含まれているからだろうか。お土産にケーキ、誕生日にもクリスマスにも結婚式にも、お祝いの場や嬉しい席にはケーキが必ずある。

寺井シェフが幼少の頃からよく訪れたという、横浜中華街の味と香りの記憶から生まれた二品。中国南部を主原産とし、中国料理では鴨や豚肉料理によく使われる “八角”を、洋菓子の風味付けに取り入れている。八角とシナモンで香り付けしたイチゴジャム「フレーズ エピセ」(写真右)と、八角で風味付けしたクリームとチョコレートムースを合わせた生菓子「アニゼッタ」(写真左)。どちらも八角特有のスパイシーな香りと淡い苦みが口の中に広がり、深い余韻がある。

寺井則彦さんプロフィール

1965年横浜生まれ。「ルノートル」勤務後「ラミデュパン」シェフ・パティシエに。91年よりフランス、ベルギーにて修業。95〜96年「ル・コルドンブルー」パリ・東京校にてシェフ・パティシエとして教鞭をとる。96年「オテル・ドゥ・ミクニ」シェフ・パティシエ就任。2003年第8回クープ・ド・モンド・ラ・パティスリー」世界洋菓子コンクールで総合第2位。2004年2月「エーグル ドゥース」オーナー・シェフとなる。

寺井シェフが修業時代から愛用している道具箱。表面には、修業した店全てのラベルシールで埋め尽くされ、スター・パティシエとして活躍するまでの足跡が記されている。

 


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