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  ■音楽の贈り物
音楽の贈り物

取材・文/浅羽 晃 写真/高木厚子


第46回

歌がなくても親しみやすい
キース・ジャレットの音楽


吉澤はじめ

 2本のテナー・サックスとソヘグム(朝鮮半島の伝統弦楽器)をフィーチャーした高音圧なジャズ。端正なメロディが透明感を醸すヴォーカル曲。ソロ・ピアノによるクラシカルな小品。収録曲の多彩さが際だつ吉澤はじめさんの最新アルバムは『JAPAN』と名づけられた。

 「ポッと浮かんじゃった言葉です。寛容な部分があり、世界中のいろんなものを取り入れる日本人はユニークだと思います。日本人だけでつくった音楽ではなくても、ちゃんと日本人の音楽として成立するし。和楽器や伝統的な音階を使わなくても、自分の中から日本的なものが出てくるんですよね」

  80年代半ばにジャズ・ピアニストとしてキャリアをスタートさせた吉澤さんは90年代以降、クラブ・シーンを中心に活躍。DJ的な感覚でジャズを再構築、あるいはジャズに新たな要素を加え、同時代性の強い音楽をつくってきた。ファータイル・グラウンドのシンガー、ナヴァーシャ・デイヤが歌う「TIME」にはそうした経験が集約されている。音の厚みと色彩感が素晴らしく、バックがアコースティックなピアノ・トリオというシンプルな編成とは思えない。

 「デザインされた音楽ということを意識してつくりました。打ち込みでやるようなことを実際に演奏しています。“ピアノ・トリオ+歌でこんなに面白いサウンドってありましたか?”っていうプレゼンテーションができたと思っています」

  詩情豊かな「MAY」には叔父のピーター・アースキン(元ウェザー・リポートのドラマー)が参加。このときのトリオ演奏でベースを担当したデイヴ・カーペンターはレコーディング後、間もない今年6月24日に急逝している。

 「僕とピーターが歯に衣着せぬやり取りをしてテンションが上がったりすると、“まあまあ”みたいな感じで緩和してくれました。もっといっしょに演奏をしたかったですね」

  贈り物にしたい1曲は、キース・ジャレットの「My Song」を選んだ。
「歌が入っていない音楽を、あまり聴いたことがない人に。シンプルでポップ、さらに深くて暖かいメロディが素晴らしい。インスト・ミュージックの入門曲としてお薦めします」

   
 
Gift of a Tune
すてきな音楽は誰かに教えたくなるもの。多彩な音世界が広がる新作をリリースした吉澤はじめさんが贈り物にしたいほど大好きな1曲を紹介してくれました。
KEITH JARRETT『MY SONG』 KEITH JARRETT
『MY SONG』
現代屈指のピアニストの代表的自作曲「My Song」を含む77年録音作品。
   
 
Hajime Yoshizawa
1965年、東京生まれ。3歳からピアノを始める。91年、叔父であるPeter Erskineとともに初ソロ作『HAJIME』を制作。以降はMONDO GROSSOやSLEEP WALKERのメンバーとして活躍。プロデュース、楽曲提供も多数。
『JAPAN』
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