下田の時間は癒しの時間です

オーベルジュ オー・ミラドー オーナーシェフ 勝又 登さん

1973年、4年間の欧州修行を終えてフランスから帰国した勝又登さんは東京・西麻布にビストロ・ド・ラ・シテをオープンしました。
「あの辺りは大使館や商社があって、外国人がたくさん住んでいました。その人たちに発信するつもりだったのです。当時はオーベルジュを開くことになるとは思っていませんでした」
都内に店を増やし、忙しい日々を送るなか、休日にはたびたび伊豆に行きました。
「南仏のニースに1年間住んでいて、似た雰囲気が気に入っていたんですね。あるとき、下田の鍋田浜にご夫婦が切り盛りしているレストランを見つけて感動しました。夏が終わると誰もいなくなるような、フランス映画に出てくるような入江にあるその店のテラスで、シャンパンのハーフボトルを何本も飲んだんです。こんなところにオーベルジュができたら、なんてすばらしいだろうかと考えました」
その体験もあって、勝又さんは1986年、日本初のオーベルジュとなる「オーベルジュ オー・ミラドー」を箱根にオープンしました。以来、都会では味わうことのできない料理が多くの人を魅了しています。
「海と山の変化に富んだ伊豆の食材もたくさん使っています。自然の食材に勝るものはないですから」
会員制リゾートクラブのメンバーである勝又さんは、2か月に1回ほど、下田にあるクラブのホテルを利用しています。
「以前は大型犬のフラットコーテッド・レトリーバーとコテージに泊まり、プライベートビーチのような海岸で遊ぶことが多かったのですが、少し前に亡くなったので、いまは散歩したりして、のんびり過ごしています。僕にとって、下田の時間は癒しの時間です。どんな仕事をしていようが、生きていること自体がストレスというところもありますからね。どんなところでうまく発散できるかが大事だと思います」
日常からほんの少し離れた場所にある下田に出かけて、勝又さんは気持ちをリフレッシュしているのです。

PROFILE
Noboru Katsumata
1946年、静岡県富士市に生まれる。63年に料理の世界に入り、69年に渡欧。73年、ビストロ・ド・ラ・シテを開店し、ビストロブームを牽引。受賞は「料理マスターズ シルバー賞」(2017年/農林水産省)など。
https://mirador.co.jp/